第26回ASTAP会合速報
タイ王国の首都バンコク市内のセンタラ・グランドホテルで、9月7日~12日に、APT/ITU合同コンフォーマンス&インターオペラビリティ(C&I)イベントと第26回ASTAP(Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)総会が開催されました。今回のASTAP総会には、APT(Asia-Pacific Telecommunity:アジア・太平洋電気通信共同体)加盟国38ヶ国の内、19か国の主管庁代表を含め、約110名が参加しました。本ブログでは、ASTAP会合の主要結果概要について報告します。
会合の詳細内容に関心のある方は、TTC事務局にお尋ねください。また、総務省およびTTCの関連委員会での報告をご参考ください。ASTAPの歴史や体制については、過去のブログで紹介していますので、ご参考にしていただければと思います。
会合の開催直前の8月17日夜、バンコク市内でテロによる爆発事件が発生しました。事件の場所は、バンコク高架鉄道BTSのチットロム(Chit Lom)駅の前にあるヒンズー教寺院のエラワン廟(びょう)でした。この場所は会合会場となるホテルの隣であったことから、3週間後の会合の開催可否の心配がありましたが、その後の容疑者の逮捕、また外務省の海外安全「危険情報」はレベル1で大きな状況の悪化もなかったことから、予定通りの開催となりました。
APT事務局は、タイ政府からの安全情報を収集するとともに、ホテル周辺のすべての入り口では荷物検査を実施するなどの対策がとられました。会合期間中、参加者に特に問題もなく会合を無事に終えることができ、ASTAP議長として一安心であります。
事件のあったエラワン廟は、「プラフマー」と呼ばれる天地創造神が祀られていて、とくに金運アップに御利益があると言われるパワースポットの一つとなっているようです。幸い容疑者も捕まり、寺院のご神体には被害はなかったことから、事件の2日後には寺院として観光客に開放されたようです。バンコク滞在中にこの場所を訪ねてみましたが、写真のように、タイの現地の人々を含め、タイ国内外の多くの観光客で賑わっており、普段と変わらない状況となっていました。
下の写真は、9月7日の初日に開催されたC&Iワークショップのオープニングの模様で、私の両側はAPTの事務局次長の近藤勝則氏と、C&Iワークショップのコーディネータを担当されたNECの釼吉薫氏です。
以下では、今回のASTAP会合で合意された主要結果の概要について述べます。
(1) C&I(Conformance and Interoperability)イベント
ASTAP総会開催前の9月7日と8日に、APTとITUとの合同企画によるC&Iイベントとして開催されました。7日はベンダによる相互接続試験、8日から9日までは9社による展示会が行われ、8日には展示の概要紹介を含めたベンダや研究機関などによるC&Iに関するワークショップが開催されました。ASTAP参加者を含めて、100名以上の参加を得て、盛況に開催(イベントの関連写真)されました。
C&Iイベントの展示会の出展社は、NTTエレクトロニクス(日本)、フジクラ(日本)、古河電工(日本)、沖電気(日本)、NEC(日本)、HATS協議会(日本)、ITRC(IRAN Telecommunication Research Center)(イラン)、SCE(韓国)、NICT(日本)の9社。ワークショップの講演では、展示会の出展社に加えて、ベトナム通信省(ベトナム)、グローバルプラン(日本)、NTT(日本)、ITU、ITU-T SG11、ITU-T SG16からの発表がありました。講演内容についてはAPTレポートとして公開される予定です。
ASTAP会員(Asia-Pacific地域より参加の各国の主管庁、民間企業など)へのアンケート調査により、C&Iイベントへの評価は高く、イベントの継続について高い支持を得られました。今後は、出展者にとってもより魅力のある企画とするために、C&IイベントをASTAPとのBack-to-back開催だけではなく、ITUのアジア・太平洋地域事務所のトレーニングプログラムへの反映やITU会合との連携、APTにおけるオペレータを中心とした独立のイベントとしての企画することなど、次回のASTAP-27において企画案を検討することになりました。
(2) ASTAP Industry Workshopの企画提案
次回ASTAP-27で開催するIndustry Workshopのテーマとして、日本とフィリピンの合同寄書にて “Resilient ICT Systems for Disaster Management” が提案され、ICTによる耐災害と防災対策を議論することが合意されました。また韓国からの提案で、ITU-Tで新しい研究委員会(SG20)が設立された背景を踏まえ、 “IoT and Smart Cities” をテーマにAPTとしての課題を把握するための議論を行うことが合意されました。それぞれ半日ずつで2016年3月7日にインダストリ・ワークショップを開催することになりました。
(3) ASTAP標準化作業項目とAPT戦略計画との関係の明確化
APTでは、次期(2015年-2017年)3年間の活動指針となる戦略計画、財政計画等をAPT総会で決定し、2014年11月にAPTの戦略計画を作成しました。その戦略計画は、2014年9月にブルネイで開催されたAPT大臣級会合で採択されたブルネイ共同声明 (「ICTによるスマート・ディジタルエコノミーの構築に関するブルネイ・ダルサラム声明」 “Brunei Darussalam Statement of the Asia-Pacific ICT Ministers on Building Smart Digital Economy through ICT”)の内容を踏襲して策定されています。具体的には、ブルネイ共同声明で規定された6つの優先分野を達成するため、8つの作業項目(Work Items)が設定され、各項目毎に具体的な行動計画が盛り込まれています。
今回のASTAPでは、これらの戦略的作業項目に対して各専門委員会(Expert Group)で現在計画中の作業計画毎に、関連性の明確化を図る作業を行いました。その結果、ASTAPでは、APT地域での標準化活動を通じ、災害管理、サイバーセキュリティ、ICT基盤の技術開発を推進するとともに、地域での標準化教育と人材育成に貢献していくことを方針として共通認識を得ることが出来ました。
(4) 主な標準化文書の合意成果
今会合では、各専門委員会の作業計画の更新を図るとともに、ITU-TのSG2、SG15、SG16やITU-Dなどの他機関との連携を図るためのリエゾン文書6件を送付することを合意しました。また、今回承認の成果文書としては、APTレポートとして6件の文書を承認しました。
TTC関連では、BSG専門委員会が提案を行い開発途上国遠隔地域でのICTを活用した様々なユースケースをまとめた “Handbook to Introduce ICT Solutions for the Community in Rural areas” の改版(APTレポート)、およびマルチメディア応用専門委員会スマートカーSWGが提案を行い災害時に自動車を活用した通信システムの要求条件をまとめた “Requirements of Information and Communication System using Vehicle during Disaster” の新規(APTレポート)の2件が計画通りに承認されたことは大きな成果だと考えています。
今回のASTAP会合においては、治安などの心配もある状況にもかかわらず、総務省を中心とした日本メンバーの積極的な参加と貢献により、実りのある会合となったと思います。関係者のご支援に心より感謝申し上げます。
TTCは、今後ともITU-T、APTおよびその他の標準化機関・団体との連携を図りながら、グローバル標準の実現に向けた標準化活動の推進とアジア・太平洋地域への普及活動を推進していく予定です。今後とも皆様のご支援をよろしくお願いいたします。